諫早の嶺で、とうとう聞こえた
長崎への旅、普通のツーリストの感覚ならば、そう大して気張るほどの旅程でもない。
しかし、そんな旅人がアンテナを担いで出かけるとなると、ちょっとばかり構えることになってしまう。
HF帯での移動運用なら、極端に簡易な設備となればロングワイヤ一本でもOKだし、後は、宅急便でトランシーバなどを現地まで送ってしまえば事足りてしまう。乗り物はレンタカーでもなんとかなるし、宿泊もイージーな予約で済んでしまう。誰しもが考える、お手軽な移動運用なんていうのを、やはり、いつかやってみたい。
私の旅は、そうはいかない。どうして、そうなったのだろうか。
なんといってもUHF帯での運用は、ロケーションとアンテナが鍵だ。ホームを離れて数百kmから一千km彼方での運用になることが多い。そのために、整合のとれた、利得の高いアンテナが条件になる。
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ハムフェアのブース「風の丘」でも、五家原岳
移動運用のリポートを展示、各局で賑わった。
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まずは、送信は何とか頑張るとして、呼んでくれる各局の信号をなんとかキャッチしなければならない。
最低限度に近い微弱な信号も、ぎりぎりで聴き分けなければならない。
別な言い方をすれば、こちらからの信号は微弱でも、各局が素晴らしいラインナップで聴き、応答してて
くれれば、なんとかなる世界だ。
そのために、移動運用の現場では、現在は、28エレ×2列×2段を使っている。
これをどうやって現地へ運ぶかだ。さらに、私の場合は、車のルーフキャリア上に、アンテナを
組み上げていない。理由は、現地で、車を自由に使いたいし、車の中での寝泊まりが原則だからだ。
しかも、現地で数日間か一週間以上の滞在になるので、アンテナは、グランドから立ち上げる
方法をとっている。グランド上にクロスに並べた足場パイプを基台にし、その上に1.5m高のルーフ
タワー設置、後は4m長のマストパイプを立ち上げ、これに2列×2段のアンテナを取り付ける。
組み上がったアンテナは、一段ごとに上下に動かせるように、マストのトップに滑車を取り付け、
手動のウインチでワイヤを巻き上げたり、巻き戻したりしながらアンテナ全体の位置を調整している。
このやり方だと、風が強い時とか、落雷の危険が迫ったり、夜間休む時などには比較的安心して
いられる。
当然とことだが、ステー線もしっかり張っている。また、アンテナの組み上げには数時間かかるが、
別に慌ててる必要がない場合には、ゆっくりやっている。
今回も機材類をはじめパイプなどを含めると、結構な荷物になり、その大部分を車上のキャリアに
納めることになる。実にみっともない出で立ちで、一体、何屋なのか、不躾な質問をされることも
珍しくない。
持ち運ぶ荷物の総重量は、約100kgを軽く超えてしまう。それでも結構楽しみながら懲りない旅を
つづけてきた。
そして、旅先での出会いと共に、忘れられない大切なものがある。それは、有志の各局が録音して
くれた音声の記録のことだ。驚きと感動の音声がテープやDiscで各局から記念に贈られてくる。
何にも代えがいたい宝物として大事に保管している。
これらの音声を聴きながら、現地からの、自分の「生の音声」に、改めて感動が蘇ってくる。
なかでも忘れられないのは、小笠原諸島・父島(1996年)、沖縄県八重山郡・与那国島(2004年)
の音声記録だ。当メーリングリストのホームページでも、すでに公開していただいている。
今回の長崎県・諌早市移動運用からの録音は、横浜局のご好意により、編集され、すでに
当ホームページ上で紹介されている。心からお礼を申しあげたい。録音は全場面ではないが、
各局が果敢に当局を呼ぶ音声は、スリリングであり、悲喜交々の伝搬現象を目のあたりに見る想いで、
想像を超える臨場感を十分満喫させてくれている。
そんな長崎県・五家原岳(諌早市)からの生々しい音声を聴きながら、このリポートをまとめている。
メーリングリストのホームページのご協力を得て、ここに遅ればせながら運用記を紹介させていただく
ことを心から感謝したい。
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