さようなら壱岐島
2006年8月2日
 やや風がおさまったが、蒸し暑さに目が覚めた。
 午前11時15分、芦辺港発のフェリーに乗船するには、遅くとも 午前10時頃までには、解体と積み込みを終わらねばならない。
朝食前にも出来るだけの作業を進めておきたかった。


手早く解体
 左京鼻の日の出は、今朝も美しく水平線が燃える瞬間を迎えて いた。ツバメが舞い、ウグイスが松林で鳴く。テントに付着した 朝露を払い、入り口のファスナーを引く。
 ブルーシートをグランドに敷き、テント内の全ての機器や 道具を並べる。ケーブル類を外しまとめる。テントは乾してから たたむ。アンテナは完全に解体し、三分割したものを、それぞれ シートで包む。
 後は、30mほど離れた道端まで運ぶ。車を横付けし積み込む。 もっとも大変な積み込み、梯子や脚立を使って、ルーフキャリア 上の四つの収納箱に仕分けしながら収納する。長ものは 中央部に挟むように載せ、マストパイプは、キャリアのサイドに 固定する。
 積み込みを終わった姿は、一体何屋さんか、普通の人では 分からない。よくあった質問が、「何の行商をやっているの?」。
いつも笑って「夢を売って歩いているんです」と答える。
 忘れ物はないか、ゴミは残していないか、チェックしながら 二人して歩きながら、再び、左京鼻に立った。あのアンテナも テントも、あのCQも聞こえなくなった左京鼻。竜神さんから いただいたお守りをポケットに、岬を離れた。
 通い慣れた芦辺港への道路、わずか数キロの海岸沿いの光景も 見納めだ。対馬からやってくるフェリーがまだ来ていない。係の 人の話では、空いているよ、ということだ。
 定刻をやや過ぎ、それほど多くない乗船客と車を積んで、フェリー が岸壁を離れた。見覚えのある岬、左京鼻の地形が、右舷に 見えてくる。ありがとう、楽しい二日間だった。

 二等船室の片隅で寝込んでしまい。博多入港のアナウンスがある まで気が付かなかった。博多も暑い。天神の近くのコンビの駐車場を 借りて、軽く食事をとる。ガソリンを補給し、JA6ITH局の事務所へ 向かう。九州自動車道の八幡インターを下車。
 今回の旅で宿をお借りするなど大変お世話になった。また、 預かったハンディー機もお返ししなければならない。対馬へ渡る 前は、荒天の山陰道を旅してきた疲れで参っていたところを助けて いただいたのだ。あらためてお礼を申し上げる。
 あそこで挫けていたら、今回の旅は、これほどにはならなかった だろう。
「お世話になりました。さあ、これで帰ります。ありがとうござい ました。」 事務所の前で見送りを頂き、別れる。

 夕方近くなった門司PAで、休憩。あの狭い海峡を見下ろしながら 対馬、壱岐での運用の日々を思い出していた。旅の前半の、悪天候と 熱帯夜に苦しめられた、車での生活。後半のまさしく真夏の島々での 運用。とても対照的だった。
 海峡を渡り、山陽道へと走りだす。どこかのサービスエリアで食事を 摂り、より静かなパーキングエリアで休もうと決めていた。