対馬市撤収
2006年7月29日
 運用が終わった展望台へ、早く起きて行ってみた。あの興奮を 呼んでくれたアンテナそしてテントは、何事もなかったように 静寂な陽光と朝露のなかでたたずんでいた。
 このまま撤収しないでそっとしておきたい気もする。
 テントを開け、まず配線を外し、機器類を外の東屋に移動す。 家内が手際よくテント内の床を掃除し始める。どこから、いつ侵入 したのか、クワガタの雌が一匹、床のシートの下から見つかる。
 この森林公園ではクワガタの採集が盛んなようで、そういえば 昨夜も懐中電気を持った親子らしい二人連れが、網を持って 夜中にやってきていた。
 もっとも手間のかかるのがアンテナ本体の解体。ウインチを まわして低い位置までアンテナをおろす。下段の二列を順に ブームから外し、草地にとりあえず並べる。そして次に 上段に取りかかる。H型に組むセンターパイプをスライダーから とりはずすと、あとはマストパイプだけ。


パイプ類をまとめる
 基台部分のルーフタワーの足下のクランプをゆるめ、4m長の マストパイプを倒せば、ほぼ終了。
 山から下の駐車場まで車で機材類を運び降ろす。この展望台へ 103段の階段とは別に、車がやっと通れる脇道が展望台を周回する するようにある。普段は入り口が施錠されている。来たときと 同じように、江藤さんにお世話になる。
 炎天下の駐車場は、倒れそうになるくらい灼熱の広場。
 辛抱強く分解したアンテナ、マスト、パイプ類を積み上げ 細かい道具や器材は大きな4個の収納箱を先に上げておいて これに仕分けして入れていく。
 脚立、アルミの椅子、梯子、踏み台など、箱の上に重ねてロープ とゴムひもで縛り上げる。なんとこんな姿何屋にに見えるだろうか。 ジプシーか難民の引っ越しのようだ。
次の壱岐島での運用があるので、ルーフタワーなどは解体せずに そのまま積み上げてある。

 誰もこんなところへこないとおもっていたら、一台のパトカー がやってきた。若いお巡りさんがいぶかしげに我々を観察している。 おもむろにやってきて尋ねた。
「このアンテナは何に使うのですか。その脇においてある釣り竿は 何ですか」
 やがて、もう一台の小型車がやってきて、兄ちゃん風のラフな Tシャツを着込んだ男が近づいてきた。
「この方は?」
「仲間です。私たちの」 「ああ、私服の刑事さんさん?」
「そうです」
「じつは、この辺りで違法電波の運用や、最近、不法滞在者の 蜜出国がありまして、、、、、」
 この暑さの忙しい中での職務質問。そこでアマチュア無線 従事者の免許状を提示、すべてわかってもらった。当たり前だが 不携帯なら何をいわれるか、わからないケースだ。
 なぜ、此処へ来たか、どんな運用をしているのかを説明。 複雑な海岸線、密猟、不法な入出国事件が絶えないようだが とてもこの長い海岸線ではガードしきれない。韓国からの観光客が 増えるこの時期、捜査当局も人手が不足するなか、手を焼いている ようだ。

 山を下りていったパトカーを追って、ただちに権現山を下った。
 向った先は、あの海、西泊海水浴場だ。もう我慢できなかった。 到着するやいなや、パンツ一枚で水辺へ一直線。冷たい、きれい、 気持ちがいい。思う存分,誰もいない砂浜で水遊び。
 水しぶきをあげながら、走り回りながら、なんども、なんども 頭から海水をかぶった。
 殆ど人影のない砂浜,シャワーなどの設備も完備している。砂浜 もきれいだ。この後、近くの「渚の湯」へ入浴に行くことにして いたがやめた。ここでシャワーをかかり、溜まっていた洗濯も しようということになる。家内がせっせとバケツを持って出かけて いった。
 汗だらけの着ていたものから解放されて、高さ75cmの脚立の上に ちょこんと座り込んで休憩。誰もいない海岸の監視人気取り。  あの権現山の麓に、こんな素敵な場所があったのか。運用も 終ったあと、この趣向は癖になりそうだ。それにしても快適だった。

 夕食のバーベキューパーティーに招いてくださった江藤さんの 自宅前の広場では、支度が始まっていた。
 10年前にも同じ趣向で、若い江藤さんたちと花火を見ながら バーベキューを楽しんだことがあった。あれからそんなに時間が 経ったのか。当時、長女だけだった家族に次女が生まれ、それは 賑やかな団らん。残念だが、若い彼は、福岡の病院へ治療で入院して いる。明日は、久しぶりで親子対面の福岡行きだとか。
 ふんだんに肉が網の上で焼けている。飲みたかった冷たい缶ビール を開け、一気に飲み干した。
 夕闇がやってくる。空が紅に染まりだす。話は尽きない。
 冷たいスイカが出てきた。美味しかった。
 素晴らしい、心づくしの夕食を堪能、今夜の野営地へ向うことに なる。
 あの海水浴場、西泊へ行こう、ということになった。

 お世話になりました。権現山、上対馬の皆さん、またいつか元気で 訪ねたい。見事なクレセントが西の山かげへ沈んでいった。静まり返った 海辺は、今夜も、格好の野営地だった。