運用開始
2006年7月25日
 昨日は、江藤さんの計らいで地元の上対馬支所に出向き権現山森林公園の 展望台への鍵を借りることができた。鍵は撤収の後で返却してくれればいい とのことだった。会社の社員である方が軽トラを運転してくれることになる。
 江藤さんのお孫さん達が一緒に山へあがることになり賑やかだ。私たちは 先行し、まず車に積んである荷物をルーフキャリアから降ろすことだった。 山の駐車場の片隅で、様々な器材や道具を並べる。
 やってきた軽トラに積み込んで、まず、私が上がり、荷物を下ろして整理し、 再び駐車場へ戻るといった方法を取ることにした。
 パイプ類やアンテナ本体はまとめて一回で運び上げることができた。 展望台の広場で走り回っていたお孫さん達が遊び疲れて帰ると云い出した。 二回の往復で完全に荷揚げが終わった。脇道の出入り口の鍵は私たちが保管 することになる。

 皆が引き上げてしまった後、静まり返ると同時に、時々雨が降り始めた。 さっそく荷物の整理とテントの設営にとりかかる。昼の軽食もそこそこに、 展望台へ上がる。
 この階段が何段あるのか数えながら上がる。階段の上からは下の駐車場の 一部が見通せ、勾配も思ったより緩やかで4,5段おきにやや幅の広いステッ プがあるので、とても楽に上がれた。
 小降りになった雨をみて、まずテントを張る。そして、濡れては困る器材 や道具類、トランシーバなどを収納した。近くにある東屋が物置き場として 便利に使えそうだった。暗くならないうちに山を下り、車に戻った。

 誰も来ない広い駐車場の片隅に野営の支度を始める。トイレの水は飲料水 としては使えないので、江藤さん宅で分けていただくことにした。一日で約 20リットル位の水を使う。
 夕食を早めに済ませ、山すその高台にある「渚の湯」というお湯センター に出かけた。ロビーから室内まで、ハングルが併記されている。フロントの 話では、団体の旅行客が結構利用しているそうだ。
 いい気分にひたりながら再び山の駐車場へと戻る。時折見渡せる道路から は漁火が美しい。そして、雲も高いことから天気もそれほど悪くないことが わかる。山の中で霧に巻かれながら走るうちに、突然、目の前で動くものが あった。
 良く観察してみると鹿だった。保護されていて、最近は頭数も増加したよ うだ。運用地の草地にあった糞はかれらのものだったのだ。
 今夜も静かな野営。雨がやんでほしい、そんなことをおもいながら眠りに ついた。


権現山駐車場
 翌朝、トイレに起きた家内が、窓越しに外をみやりながら大きな声で、 「お父さん、晴れだよ!」と。おもわず私もカーテンを急いで開けてみた。
 駐車場のアスファルトが乾いている。久しぶりの晴れだ。「よし、食事前 にひとっ働きするか!」
 はやる気持ちを抑えながら、展望台への階段を上がる。
 途中の石段の各所に例の糞がちらばっている。様子からみて新しい。 群れをなして徘徊しているのだろう。
 100,101、103と数えながら、階段の頂上に達した。
 展望台の草原はみずみずしく、溢れる朝陽に輝いていた。テントのフライ シートを揺らし、付着した水滴を払い、入り口のジッパーをあげてテントを 開く。さあ、いよいよ、本番の仕事始めだ。工具類を取り出し、いつもの組 み立て作業にとりかかった。

 見渡すかぎり穏やかな日本海が眼下に広がっている。ここで海抜183mという。 複雑な地形のなか入り江の漁港、そして集落がよくわかる。北に目を転じれば、 遥か彼方に朝鮮半島の山々と沿岸の街らしきものが確認できる。およそ50kmし か離れていないのだ。
 さて、アンテナを建てる位置を決めるのだが、手がかりは小さな磁石。交信 したいエリアを頭に描きながら、まず「北」、そして、「東」、さらに「南」。 北海道方面は真北ではない。九州方面をにらみながら、約120度ぐらいで十分だ。 沖繩から呼ばれたらどうしようか、それはそれとして、ほぼ位置を確定した。
 近くの東屋は広いので発電機やガソリンタンクを置くことにする。外で使う クランプ類、ステー線。ロープ類もまとめておく。
 今回もアンテナの基台部分は、高さ1m20のルーフキャリアを使う。組み立て が終われば、グランドにクロスに組んだ足場パイプの上にクランプで固定する。 後は、4m長のマストパイプを差し込んで立上げ、完了。2列2段のアンテナはマ ストパイプにあらかじめセットしたスライダーと呼んでいる器具に取り付ける だけ。巻き上げ用のウインチで、アンテナを所定の高さまであげる、いつもの スタイル。
 3分割の28エレの八木アンテナをつなぎ、給電部にケーブルを接続。4分配器、 直下型プリアンプへとさらに接続して終わる。プリアンプからは、プリアンプ 用の給電線、そしてトランシーバへのメインケーブルといったところ。
 最後に、ローテータ用のコントロールケーブルを本体に接続。テント内では 引き込んだケーブルや給電線などを機器へと接続。プラスティック製の折畳み 式ののイス・テーブルをひろげ、シャックをつくる。機器の置く位置は大体決 まっているが、その時の気分や思いつきでいくつかのバリエーションがある。 これが上手く決まらないと気分が悪い。今回は問題なく決まったようだ。
 通電テストが済まないうちは、やはり、一抹の不安がいつもついてまわる。 特にプリアンプの作動状態を確認したり遅延回路が正常に働いているかなど、 神経を使うところだ。
 事前にテスト運用をしてきたからといって。決して安心できない。運送途 中でどんなトラブルが起きているかも知れない不安が残るからだ。

 夕食の後片づけを済ませてから上がってくるという彼女を残して、ひと足先 に展望台へ。今夜は、まず試験的に波を出してみることにした。発電機のガ ソリンの量を点検、始動。軽やかな回転で動き出し、テント内のパイロット ランプが明々と点灯した。
 テント内のイスに座り込み、安定化電源、トランシーバ、ローテータ用の コントロール用ボックスのスイッチをON.。送信状態でないことを確認の上、 遅延回路のボックスのプリアンプのスイッチをONに。スピーカーからの増 幅されたノイズが確認できる。正常だった。


アンテナはスタンバイ
 あっという間に時間が経過したが、午後9時過ぎ、初めて試験電波を出し 始める。しかし、どうも様子がおかしい。JA4MVG局・嘉澤さんが指摘してく れて初めて知った。テント内の暗がりで確認不足、うっかり「LSB」で送信 していたのだ。慌てて「USB」にセット。まことにお粗末だった。
 失笑を買った始まりだったが、まずは波が正常に飛んでいることは確認 できた。JJ3TXX,、JI3SRZ各局も呼んでいただいたようだが確認でない。 コンディションが良くないのか。それでも、神戸、高砂、羽曳野各局から コールをいただきなんとか交信が成立した。
 どうも、ローテータの方位が正確に設定できていないようで、これは明 日十分に調整し直すことにした。とりあえず。明日からの本格運用ができ る見通しがついた。傍で聴いている彼女もほっとしたようだった。
 明日からの好天を祈るばかりだ。