福岡での憩い
2006年7月20日
 激しく車に打ちつける雨音に目が覚めた。
 時計を見ると午前5時半をまわったところ。雨足は弱まるどころか、 さらに悪天候が続くようで、このままでは済まない予感がした。完全 武装の雨合羽に長靴を履き外に出る。まずは、積み荷の点検、そして 朝食の炊飯の支度を始めた。
 折からの台風5号の進路も大変気になっていた。インターネットで 検索したように、台湾から中国大陸へ進路をとってくれるかどうか。 この雨騒ぎに台風の影響が加わったらどうなるか、考えるまでもなかった。

 散々風雨に打たれ続けた山陰の旅だったが、これ以上無理すると彼女 に大きな負担がかかるのではないか、不安がよぎった。ハッチバックを開け、 ブルーシートで三方を囲むように張る。シートの端が雨風でバタつかないよ うに、はと目を利用してロープで駐車場の柵に固定する。

 とりあえず今後どうするか、相談を始めた。ここまで来たのだから、 福岡までは行って見ようということになる。その前に、昨日探しておいた近 くの菊川温泉に寄り、体の汚れと冷えた体をケアすることにした。ひどい降 りになり、車を降りて温泉の玄関まで辿り着くまでに、傘など役に立たない 始末。それでも、やっと着替えてほっとする。
 昨日やってきた中国自動車道の小月インターへ向かい、一路、福岡を目指す。 関門海峡は霧がかかっていたが、空は明るかった。雨も小降りになり、福岡に 近づくにつれ、パタリと止んだ。園畠さんに会社の事務所で、夕方にお会いす る約束をした。

 福岡に行ったら会いたい方々が居た。JA6NW局、長倉さんご夫妻と対馬市の 上対馬にお住まいの友人JP6EWG局、江藤さんだった。江藤さんは、傷めてい た肩の手術のため、対馬から福岡の病院へ入院していて見舞いに行きたかった。 彼が対馬の自宅に不在のため、現地の運用場所の打ち合わせなどをしておきた かった。


長倉さん夫妻
 長倉さんは、、かねてから青森でHF帯でいつもお相手を頂いていた友人のYL 局とご縁がって結婚され、それ以来OM局ともお付き合いをいただいている。 デルタループのアンテナにづくりに並々ならぬ情熱をお持ちの大先輩でもある。
 体調を崩されている奥さまも元気を取り戻され、久しぶりに、御二人の笑顔を 拝見できた。家内も面識があり、一昨年、沖縄県の与那国島運用の帰り道にお寄 りしたこともあって、賑やかな再会になった。「天気は今週後半から良くなるよ。 ほれ!、予報を見てごらん」とインターネットを開けてくださる。「ここで帰っ てしまうなんて、そりゃないよ」と励ましてくださる。車の屋根に積んであった 布団袋を見つけて、これから不要だったら自宅へ送り返してあげるとの申し出を いただく。不要になったマットレスだったので、着払いで自宅へ送ってくださる ようにお願いした。
 毎度のことながら、車上の並でない積み荷を気遣ってくださり感謝だった。
 「まぁ、気をつけて行っていらっしゃい」あれだけ悩んでいた運用中止の気配も、 すっかり吹き飛んでしまい、島への旅を続けることになった。

 福岡空港に近い糟屋郡の病院をカーナビで探しながら走り出した。カーナビ の威力はさすが。型式の古いバージョンのナビゲーションだったが、問題なく、 江藤さんの入院している病院まで連れていってくれた。ナースステーションか らコールしてもらい、ご本人の病室を訪ねた。手術をしたばかりで、リハビリ のためにショルダーバッグのような大きな包みを小脇に挟んで現われた。
 どうも暇を持て余しているようだった。じかに会って話をするのは久しぶり だった。実家の仕事はお元気な父親に任せているとはいえ、何かにつけ電話連 絡を取りながら仕事のフォローをしているようだ。
 彼の提案で、今回の上対馬町の権現山の展望台を使うことに決めたいきさつ があり、さらに細い打ち合わせをした。彼と一緒に運用したかったが、今回は 止むを得なかった。つい長っぱなしになってしまったが、夕方のロビーでの団 らんを終え、病院を出た。

 お会いすることを約束した園畠さんの事務所は、北九州市の八幡西区にあり、 ここからは、まだかなりの距離があった。九州自動車道の八幡インターをおり れば、すぐだったのだが、インターからの道を勘違いして、とんでもないとこ ろへ迷い込んでしまった。電話連絡がついて、レスキューで園畠さん自らが迎 えにきてくださった。
 フレンド局の大波多さんも駆けつけてくださり、事務所で歓談。とにかく、 疲れをとるために今夜はご自宅に泊めてくださることになった。直方のご自宅 まで案内していただき、思いがけない休息をとれることになった。ご家族揃って の食卓にお招きをいただき、こころから感謝だった。
 空気清浄機も設置された畳の部屋で、手足を十分に伸ばして安眠ができた。

 翌朝、朝食を頂きながら、近くの移動ポイントをご案内くださる話になった。 簡単なHF用のワイヤーアンテナの設置と運用を見せていただく。
 週末の天気予報を見ながら、対馬へのフェリーの予約をし、いよいよ島へ渡 ることを決めた。電話予約で、22日発の対馬の比田勝行きの便を確保した。
 翌日は、私たちが太宰府に行きたいことを知って、わざわざ案内してくださ ることになった。天気は間違いなく回復に向かっているようで、台風も西に それて心配ががなくなった。